活力朝礼06【広さではなく深さ】
食べられなかった美味しいお饅頭
数年前、私が体験した出来事です。
まだ午前中にもかかわらず、いつも人が並んでいる人気の饅頭屋(まんじゅうや)さんが広島にありました。
ある日、思わず並んでいる方に聞いてみました。
「どうしてこんなにいつも並んでいるのですか?」
「ここのお店の饅頭は、あんがとても美味しくて、そのうえできたてを並べるので、すぐに行列ができて売り切れるのです」
おばあちゃんがった一人でつくっていると聞きました。
理由を知った翌日、ふたたび昼過ぎに行ってみると「今日は売り切れました」とすでに看板が下がっていました。
それから3年ほど経ってから、ふたたびお店の前を通ってみると、シャッターは閉まっていました。
「あれっ?」と思って通りがかりの人に聞いてみました。
「このお饅頭屋さん、閉じたのですか?」
「はい、2年ほど前に息子さんが帰ってこられたのですが、こんなに人が並ぶなら少ししかつくらないのはもったいないと、たくさんつくるようにして、どんどん売れて、その後すぐに繁華街に別の支店を出すなどしてお店を大きくしました。ところが、そのうちパッタリ売れなくなりまして、間もなく両方のお店がダメになったのです」
「ええ!?どうしてでしょうか。美味しくなくなったのですか?」
「どんどん売れるからと大量につくることで味が変わって、しかも支店用に冷凍商品も開発されたのです」
「あ~ぁ、おばあちゃんは買っていただくという感謝の心を持っていたけど、息子さんは売りたい、儲けたい心に負けて、おばあちゃんの温かい心を饅頭から取り除いてしまったんでしょうね。冷凍商品となると、温かい心や食べてくれてありがとうという感謝の心がお饅頭からなくなったんですね」
「そうです。あっと言いう間に両方がダメになりましたから」
「売り切れごめん…って、続ける欲のコントロールが難しいですね」
「当たり前ですが、嘘のない感謝がつくる商品は人々から歓迎されますよ。大切なのは自分が何をしたいかではなく、人々が何を求めているかに目覚めることでしょう」
私が美味しい饅頭を食べられるチャンスは二度となくなりました。
『無敵の経営』サンマーク出版
大事なことは、「広さではなく深さ」だということ。
世界中を駈けずり回らなくとも、深ければ、自然にまわりに伝わる。
1件1件のお客様をないがしろにせず、大切にして、真の深さを身につけたい。
イプラやバンク、エアプラ、カーキュートでご縁いただいた1件1件のお客様。自分の名前を記憶されるように努力していますか。